「個別支援計画書を活用した取り組み」 ご質問とコメント(3/6)

九州で救護施設の施設長をされている方から、個別支援計画についてご質問をいただきました。
質問は、研究協議会の開催に当たり分科会での議論に向けて出たものだそうです。
このご質問と、私がお返ししたコメントをご紹介します。

【質問3】作成しなければならない書類が多く、「作る」作業に追われている印象があり、ほかの施設ではどのように運用、作成をされているのかお尋ねしたい。

書類作成の多さに「作る」作業に追われているという印象は、救護施設に限らず全国の福祉施設が抱える共通の課題です。「ほかの施設でどのように運用、作成をされているか」については、研究協議会の参加施設に意見を求めていただくことにして、ここでは、救護施設で導入しやすい効率化のアイディアを提示します。

1 計画作成プロセスにおける効率化
(1)「ながらアセスメント」を組み合わせる
個別支援計画のアセスメントのために特別に時間を設けるのではなく、日々の支援の中で利用者の様子を観察し、気づきをメモする「ながらアセスメント」を職場全体で行いまます。たとえば、食事の時間や、地域行事への参加を通して見られた利用者の変化などを、気づいた人がメモします。このように、日々の業務の中にアセスメントを組み込みます。

これと、アセスメントのために設けた時間で集中的に行われる通常のアセスメントを組み合わせ、その結果を「アセスメントの結果」としてアウトプットします。

(2)情報共有を定例化、即時化する
朝礼や夕方の引継ぎの活用 短時間で利用者の状況や気づきを共有する場を設けます。口頭での共有だけでなく、電子掲示板や共有フォルダに即時に入力できる体制を整えると、後から個別支援計画に反映しやすくなります。

チャットツールやグループウェアを活用する 支援システムやビジネスチャットツール(例:Slackなど)を活用し、利用者に関する共有事項や気づきを職員間でリアルタイムに共有できるようにします。これによって、書類作成時にわざわざ情報収集する手間や、文字入力の手間を省略することができます。

こうして共有された情報は、上の「ながらアセスメント」でも活用できます。

2 役割分担の明確化と権限委譲
(1)担当職員が個別支援計画書(案)の大部分を作成す
利用者を最もよく知っている担当職員が個別支援計画(案)の大部分を作成します。それを、他の職員や管理者がチェック・修正するようにします。

多くの救護施設では、担当職員が個別支援計画を作成する仕組みになっています。一方で、日常の支援を行う職員とは別に、個別支援計画を作成する担当者を置いている施設もあります。どちらの方法を選ぶかは施設ごとに決めます。いずれの方法でも、個別支援計画の作成は、基本情報、利用者の希望・要望、アセスメントといったパートごとではなく、全体をひとりの職員が案出して、それをその他の職員がチェックする形で進めることをお勧めします。これによって職員各々の役割と権限が明確になり、すべての職員が個別支援計画の作成により深くコミットできるようになります。

(2)定型業務を自動化/簡素化する
定期的な身体測定記録やバイタルサインの入力など定型的なデータ入力は、可能な限り自動化するか、一覧表を作成して記入するなど最小限の入力で済むようにフォーマットを工夫しましょう。

3 書類作成技術の効率化
(1)テンプレートを細分化する、入力補助機能を設ける
基本的な計画書のテンプレートに加え、課題別(例:対人関係、服薬管理、金銭管理など)のテンプレートを用意し、必要な部分だけを選択して活用できるようにします。

また、ドロップダウンリストやチェックボックス、過去の記載内容からの引用機能などを活用すると、入力の手間を最小限に抑えることができます。

(2)音声入力やAIツールを活用する
スマートフォンやPCの音声入力機能を活用して口頭でシステムに入力することで、タイピングの手間を省くことができます。この仕組みを活用して、日本語で支援記録を作成することが困難な外国籍の介護職員でも記録を作成できるようにした施設があります。

将来的には、アセスメントや日々の支援記録から自動的に個別支援計画が案出されるようなAIツールが登場することも十分予想されます。最新の情報をフォローアップしましょう。

(3)他施設と共同研究・開発を行う
九州地区の複数の救護施設が連携して、共通の電子記録システムや個別支援計画のフォーマットを開発・導入することで、費用負担を軽減しつつ、より地域の実情に合った運用体制を構築できる可能性があります。