九州で救護施設の施設長をされている方から、個別支援計画についてご質問をいただきました。
質問は、研究協議会の開催に当たり分科会での議論に向けて出たものだそうです。
このご質問と、私がお返ししたコメントをご紹介します。
【質問4】達成度について、数値化できないものをどう判断しているのか、どの時点において達成とされているのかお尋ねしたい。
数値化できない支援目標の達成度をどのように測るかは、個別支援計画の実行段階におけるテーマのひとつです。救護施設の現場で実践しやすい方法を提案します。
1 数値化できない目標を「見える化」する
(1)行動の具体化とスケーリングを行う
「精神的に安定する」といった目標を、「週に〇日、穏やかな表情で過ごす時間が増える」「特定のイライラする状況において、自らクールダウンできる行動(例:深呼吸、好きな音楽を聴く)を選択できる頻度が、〇回/週から△回/週に減少する」など、具体的な行動に落とし込みます。さらに、その行動の程度を5段階評価などでスケーリングし、変化を物理量的に把握できるようにします。
(2)質的変化の記述とエピソードの記録を行う
単なる回数だけでなく、利用者の表情、声のトーン、態度、周囲への反応といった「質的な変化」を具体的に記述します。「以前は〇〇だったが、最近は△△な様子が見られるようになった」といった比較表現も有効です。 「○○さんが、久しぶりに笑顔で、昔住んでいた佐賀の故郷の話をしてくれた」など、印象的なエピソードを記録し、その変化の背景や意味を多角的に分析します。
(3)ポジティブな変化に注目する
小さな変化や、以前には見られなかったプラスの兆候を積極的に捉え、「〇〇ができるようになった」という視点で評価します。
2 達成と判断する時点を決める
(1)「評価指標」の事前設定
目標設定の段階で、「達成」と判断するための具体的な評価指標(行動の内容、頻度、質、期間など)をあらかじめ明確に定めておきます。これは、「なにをもって目標を達成したと見なすか」を、支援に当たる職員全員で共有するということです。
(2)多職種カンファレンスでの総合判断
定期的なカンファレンスでは、担当職員の観察記録だけでなく、可能であれば看護師のバイタルサイン、作業療法士の活動参加状況、心理士の面談記録など、多職種からの情報を総合的に判断します。この際、客観性を保つために、複数の職員が同じ評価指標に基づいて評価し、意見を擦り合わせることが重要です。
(3)利用者の自己評価・家族からの情報
意思疎通が可能な利用者には、目標達成度について自己評価を促し、その意見を尊重します。また、家族との情報共有を密にし、施設外での利用者の様子も達成度判断の重要な情報源とします。たとえば、遠隔地に住む家族に対しては、オンラインでの面談なども活用して、情報交換の機会を増やすことが考えられます。
(4)「定着/習慣化」の確認
一時的な行動の変化だけでなく、その変化が「定着/習慣化」しているか、継続的に見られているかを評価の基準とします。目標期間終了後も、その状態が持続しているか、モニタリングを続けます。