『救護施設及び更生施設における個別支援計画の作成について(社援発1001第4号 令和6年10月1日)』が発出されました。
通知には、救護施設及び更生施設における個別支援計画の作成に関する概要、基本的考え方が示されています。
本文にもあるように、この通知は国や都道府県が普通地方公共団体に向けて「技術的助言」として発出されたものです。これにより、今後、福祉事務所は救護施設から提出された個別支援計画書を見る時、その個別支援計画がこの通知にある「基本的考え方」「時期」を踏まえ、「福祉事務所が策定する援助方針」に沿ったものであるか、また「必ず記載されること」とされている項目が含まれているかを確認することになると思います。
なお、この通知には『個別支援計画に関するQ&A』が出されています。あわせてご覧ください。
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社援発1001第4号
令和6年10月1日
各 都道府県知事 指定都市市長 中核市市長 殿
厚生労働省社会・援護局長
救護施設及び更生施設における個別支援計画の作成について
「救護施設、更生施設、授産施設及び宿所提供施設の設備及び運営に関する基準及び厚生労働省の所管する法令の規定に基づく民間事業者等が行う書面の保存等における情報通信の技術の利用に関する省令の一部を改正する省令」(令和6年厚生労働省令第118号。以下「改正省令」という。)が、令和6年8月30日に公布され、同年10月1日より施行されることに伴い、救護施設及び更生施設(以下「救護施設等」という。)は、入所者ごとの個別支援計画を作成しなければならない旨、同年8月 30 日付で通知したところである(別添参照)。
救護施設等における個別支援計画の作成に関する概要、基本的考え方等は下記のとおりであるので、十分に御了知の上、適切にご対応願いたい。
また、各都道府県におかれては管内の福祉事務所設置自治体(指定都市及び中核市を除く。)及び管内の保護施設に対して、各指定都市及び各中核市におかれては管内の保護施設に対して、このことを十分周知いただきたい。
なお、本通知は地方自治法(昭和22年法律第67号)第245条の4第1項の規定による技術的助言として行うものであることを申し添える。
記
第1 概要
救護施設等は、最後のセーフティネットとして、精神疾患や身体・知的障害のある者、アルコール等の依存症のある者、DVや虐待の被害者、ホームレス等、様々な生活課題を抱える入所者に対する多様な支援の実践を担っている。
今般、社会保障審議会生活困窮者自立支援及び生活保護部会「生活困窮者自立支援制度及び生活保護制度の見直しに関する最終報告書」(令和5年12月27日)において、「救護施設等については、入所者が抱える様々な生活課題に柔軟に対応し、可能な方については地域移行を更に推進することが重要であり、施設の機能や目的に応じて、福祉事務所のケースワーカーを始めとする関係機関とも連携しつつ、計画的な支援に取り組む環境を整える必要がある。このため、福祉事務所と情報共有を図りつつ、救護施設等の入所者ごとの支援計画の作成を制度化する方向で対応する必要がある」とされた。
これを踏まえ、「救護施設、更生施設、授産施設及び宿所提供施設の設備及び運営に関する基準」(昭和41年厚生省令第18号)を改正し、救護施設等における入所者ごとの個別支援計画の作成を義務化したものである。
第2 個別支援計画の基本的考え方
1 個別支援計画について
個別支援計画は、救護施設等において、各入所者の意向・ニーズを的確に把握し、これを尊重した質の高い適切な支援を実現するため、入所者ごとに、総合的な支援目標、個別課題に対する支援の目標、支援内容や具体的方法等を定めるものである。
救護施設等においては、各入所者の心身の状況、その置かれている状況、日常生活全般の状況等の評価及び入所者の希望する生活や課題等の把握(アセスメント)を行い、入所者が自立した日常生活及び社会生活を営むための適切な支援内容を検討した上で、これに基づき個別支援計画を作成することが必要である。
2 個別支援計画の作成対象者
個別支援計画の作成対象者は、原則として、救護施設等のすべての入所者とする。ただし、一時入所対象者(「生活保護法による保護施設事務費及び委託事務費の取扱いについて」(昭和63年5月27日社施第85号厚生省社会局長通知)中「一時入所の取扱いについて」に該当する者)及び一時的・臨時的な入所者であって保護の実施機関が個別支援計画の作成を要しないものと認めた者については、この限りではない。
3 個別支援計画の作成時期
個別支援計画の作成は、作成対象者の入所後速やかに着手することとする。
4 援助方針との関係
「生活保護法による保護の実施要領について」(昭和38年4月1日社発第246号厚生省社会局長通知)において、保護の実施機関は、訪問調査や関係機関調査によって把握した要保護者の生活状況を踏まえ、個々の要保護者の自立に向けた課題に応じた具体的な援助の方針として、援助方針を策定することとしている。
救護施設等への入所は、保護の実施機関による措置により行われるものであることから、個別支援計画は、保護の実施機関が策定した援助方針の趣旨を踏まえたものとする必要がある。
第3 救護施設等における個別支援計画による支援プロセス
1 アセスメント(入所者の意向・ニーズの把握等)
個別支援計画の作成に当たっては、入所者の心身の状況や、これまでの生活環境や家族環境、人間関係等、入所者が置かれている状況、日常生活全般の状況等の評価及び入所者への面談等により、入所者に応じた支援の方向を見定めるため、入所者の希望する生活や課題等を把握(アセスメント)することとする。
この場合において、救護施設等は、入所者に対し、面談等の場において、個別支援計画の趣旨について十分に説明し、理解を求めるよう努めることとする。
2 個別支援計画の作成
アセスメントした結果を踏まえ、個別支援計画を文書により作成することとする。また、個別支援計画の内容について、入所者に十分に説明し、同意を得られるよう努めた上で、その写しを手交することとする。なお、個別支援計画について、一律の様式は定めないが、次に掲げる項目は必ず記載することとする。
(1)入所者の意向
個別支援計画は、入所者が自立した日常生活及び社会生活を営むための質の高い適切な支援を実現するため、入所者ごとに、総合的な支援目標、個別課題に対する支援の目標等を定めるものであり、その起点となる入所者の意向・ニーズを的確に把握し記載する。
(2)総合的な支援目標
「(1)入所者の意向」に対して、どのような支援を行うかを入所者に確認、検討の上、総合的な支援の目標を記載する。
(3)ニーズに向けた個別課題と設定理由
入所者の個々のニーズや課題について記載する。その際、アセスメントの結果から、入所者が日常生活上困っていることの解決や希望することの実現のために、入所者に関する助長・促進すべき強みや自身が取り組むべき課題を整理する。
記載に当たっては、「(2)総合的な支援目標」に照らし、原則として優先度合いの高いものから順に記載する。
(4)支援の目標(課題に対する目標)
「(3)ニーズに向けた個別課題と設定理由」で設定した個別課題に対応した支援の目標を記載する。
(5)支援内容
「(4)支援の目標(課題に対する目標)」で掲げた目標の達成に必要な支援の内容(基本的な方向性等)を記載する。
(6)具体的な方法
「(5)支援内容」で掲げた内容を具体的にどのような方法(例えば、詳細な取組内容、支援の頻度、実施曜日、支援期間等)で実施するかを記載する。
(7)モニタリングの時期
個別課題ごとにモニタリングを行う時期を記載する。
3 支援の実施
個別支援計画に基づき、施設内での取組や社会資源の活用、関係機関との連携により支援を実施することとする。
入所者の意向・ニーズは変わり得るため、個別支援計画の内容と乖離・齟齬が生じていないか等、随時留意しながら支援を実施することが重要である。
4 モニタリング
モニタリングは、個別支援計画に定める個別課題ごとの「モニタリングの時期」に実施することとする。具体的には、
・個別支援計画に基づいて実施された支援の結果、入所者のニーズがどの程度充足されたのか
・支援を通じて、入所者に新たなニーズが生じていないか
・今後の対応をどのように進めるか
等の観点から経過の振り返りを行い、個別支援計画の見直しの必要性やその内容について検討を行うこととする。救護施設等は、モニタリングに当たって定期的に入所者に面談するとともに、モニタリングの結果を記録することとする。
なお、モニタリングについては、入所者の状況変化等があった場合には、必要に応じ、「モニタリングの時期」として設定された時期にかかわらず適宜実施することとする。
5 個別支援計画の見直し
モニタリングの結果を踏まえ、必要に応じ、個別支援計画の見直しを行うこととする。見直しを行った場合は、見直し後の個別支援計画に基づき、その後の支援やモニタリングを実施することとする。
第4 保護の実施機関との連携
1 第2の4に記載のとおり、個別支援計画は、保護の実施機関が策定する援助方針の趣旨を踏まえたものとする必要がある。
このため、救護施設等においては、個別支援計画の作成及び見直しに当たっては、
・個別支援計画に基づいて提供する支援の内容は適切か・活用する社会資源が適切であるか等について、あらかじめ保護の実施機関と協議を行うこととする。
2 救護施設等においては、第3の2に記載のとおり、個別支援計画の写しを入所者に手交した場合は、当該個別支援計画の写しを保護の実施機関に対し遅滞なく提出することとする。
3 保護の実施機関が救護施設等への訪問調査を行う際には、救護施設等と保護の実施機関との間で、個別支援計画に基づく支援の実施状況等について共有することとする。
第5 その他
改正省令の施行日(令和6年 10 月1日)より前に更生施設において作成された更生計画については、当該計画の終了までの間、個別支援計画とみなすこととする。